目の病気/眼瞼下垂(がんけんかすい)の診断と治療

目 女性

こんにちは。ビクアスクリニック院長の伊藤です。

前回のコラムで眼瞼下垂の概要について紹介しましたが、今回は診断と治療方法について紹介いたします。

 

眼瞼下垂(がんけんかすい)の診断


1.MRD-1

腱膜性眼瞼下垂の診断は下垂の程度を調べるため、診察することが重要になります。

一つ目はMRD-1(margin reflex distance-1の略)というもので、リラックスした状態で黒目の中心から上まぶたの縁までの距離を測るものです。
このMRD-1は瞼裂幅(上まぶたの縁から下まぶたの縁までの距離)とも相関があるため、正面写真での評価でも代用可能です。

大学病院で勤務をしていたとき、私はこの写真を使った眼瞼下垂の様々な評価の研究を行っておりました。

写真で評価することで、術後どの程度眼の開きが改善したのか、どの程度眉毛が元の位置に戻ったのか分かるようになります。

MRD-1
眼球距離
図のB/A×100(%)で算出された数値で眼瞼下垂かどうか測定します

眼瞼下垂による眉毛位置の評価方法

2.挙筋機能の検査

次に、挙筋機能を検査します。
眉毛の上を押さえて動かないようにした状態で、目がどのくらい開けられるかを計測します。眼瞼下垂が重度の場合は治療で述べる挙筋前転術では改善しない場合があり、前頭筋吊り上げ術の適応になることがあります。また、眼だけで上方を見た状態での写真の評価を行います。
これは主に挙筋腱膜がどのくらい緩んでいるのか、元の位置から外れているのかを調べます。

術後の評価としても非常に重要な検査です。

目がどれくらい開けれるか測定
目がどれくらい開けれるか測定

3.補足

診察の結果、眼瞼下垂と診断されれば治療に保険が適応されます。
また、診断の際に腱膜性眼瞼下垂以外の原因がないかを調べることも重要です。

特に重症筋無力症の場合は、血液検査以外にも目薬で筋力が回復して症状が改善するかを検査します。
重症筋無力症と診断された場合は、そちらの治療が優先となります。

 

治療は手術療法にて


眼瞼下垂は自然に症状が緩和することはなく、放っておけば悪化していきます。

治療については手術療法となりますが、いくつかの療法を紹介いたしますので参考にしてください。

 

挙筋前転術


もともとの二重の位置、もしくは新たに設定した二重のラインから皮膚切開を行い、眼輪筋や眼窩隔膜の瞼板から外れてしまった挙筋腱膜を元の位置に固定する方法です。
まぶたを挙げることに抵抗する靭帯や眼窩脂肪も処理することにより眼を開けやすくします。挙筋腱膜を瞼板に固定して目の開きが良くなったことを確認したら、挙筋腱膜の断端と皮膚を縫合することで二重を作成します。
傷痕は二重のラインになるので腫れが引くと目立たなくなります。

 

余剰皮膚切除術


主に老人性眼瞼下垂による上眼瞼皮膚弛緩症に対して行います。
まぶたのたるみは外側に多いため、一般的には眉下皮膚切除の適応になることが多いです。眉毛の生え際より皮膚切開を行い、たるんでいる部分の皮膚を除去します。傷痕は眉毛の生え際になりますが、この部分の傷痕は時間経過とともに目立たなくなっていきます。抜糸が終われば化粧でカバーできます。

前頭筋吊り上げ術


眉毛を上げるおでこの筋肉である前頭筋とまぶたをつないで、前頭筋の作用でまぶたを挙げる方法です。
先天性眼瞼下垂に行うことが多いですが、腱膜性眼瞼下垂でも重症の場合は行うこともあります。つなぎに使うものとしては、一般的に太ももの筋膜(大腿筋膜)を使用しますが、特殊な素材の糸を使用する場合もあります。

経結膜的挙筋前転術


「切らない眼瞼下垂手術」とも言われている方法です。
具体的には結膜側から糸を使って挙筋腱膜ならびにミュラー筋を短縮します。この方法は主に軽度の腱膜性眼瞼下垂や中等度でもハードコンタクトレンズ長期装着が原因で起こったものに行われます。
皮膚切開を行わないので術後の腫れが非常に少ないのが利点ですが、糸のゆるみにより再発することがあります。

 

眼瞼下垂手術の合併症


まぶたはヒトの身体で一番皮膚が薄い部分なので、皮膚切開を伴う手術後はしばらく腫れた状態になります。

特に挙筋前転術を行った場合は二重の部分の腫れがしばらく続きます。
厳密にはこの二重の腫れが引くのは6か月程度かかります。

ですので、6か月間の術後の経過観察がとても重要となります

また、どんな手術でも残念ながらうまくいかないことがあります。

この眼瞼下垂手術でも、目の開きが足りない、逆に開きすぎる、左右で目の大きさが違う、二重が浅くなった、予想外のところに二重の線ができてしまった、などの状態になってしますことがあります。

6か月間の経過観察で改善することもありますが、残念ながら再手術が必要になる場合もあります。

 


眼瞼下垂の療法において紹介いたしましたが、最適な手術法については、外見的な重症度、発症の原因、全身の状態などを執刀医が総合的に判断して決定します。
また、患者さん自身が手術のメリットとデメリットをよく理解した上で決めて頂くことも大切です。

眼瞼下垂は放置すると、徐々に視野が狭くなり、日常生活に不便が生じます。
視力には影響ありません。(乱視が悪化、もしくは改善することはありますが。)

症状例に当てはまる方や、不安な方は早めに相談してください。